本記事では、軟包装とはどんな包材なのか、素材や使い方などを見ながら詳しく解説しています。
主にプラスチック素材が使われていた軟包材ですが、近年では環境への配慮、持続可能な未来に向けて、リサイクル可能な素材や生分解性素材の採用も進んでいます。
軟包装に関する基本的な内容を簡単に説明していますので、ぜひご参考ください。
軟包装とは
軟包装は、日常生活で広く使われている柔らかくて軽い、そして扱いやすい包装材の総称です。
例えば、コンビニで売っているスナック菓子やチョコレートを包んでいるカラフルな袋を思い浮かべてください。これらは軟包装の一種で、開けやすく、内容量に応じて形状も自由に変えられる特性があります。
食品の包装としてよく活用されているため「食品包装フィルム」と呼ばれることもありますが、食用品以外にもさまざまなジャンルの商品に採用されており、その柔軟な多様性からは「フレキシブル包装」とも呼ばれています。
軟包装の構造
野菜などの一部の商品では単層のフィルムが使用されたり、パウチ加工がされたりすることもありますが、軟包装は複数のフィルムを貼り合わせたラミネート加工によって製作されているものも多くあります。
ここで言うフィルムとは主に薄い膜状の材料のことです。軟包装によっては指で擦っても薄い一枚のフィルムに感じますが、実際には何層ものフィルムが組み合わさっており、内部には数層のフィルムが重なっているものもあります。
また、大量生産をする軟包装の商品では、商品内容や食品表示を「グラビア印刷」で直接包装材へ印刷を施すことが多いです。
軟包装と硬包装の違い
軟包装と硬包装には、素材、用途、加工方法などの違いがあります。
まず、軟包装は食品包装や日用品などに利用され、柔らかく扱いやすい素材を使用しています。具体的には、袋状のスナック菓子や冷凍食品のパッケージなどです。
一方で、硬包装は産業用のものに多く利用されます。硬包装には、特に丈夫で耐久性のある素材が求められ、例えば、重たいものや保護が必要な工業製品、輸送用の包装材などです。
また、消費者向けの製品では、瓶詰飲料、缶食品、化粧品などに活用されています。
硬包装の特徴として、形状を変更することが難しいことが挙げられます。よって、廃棄時に容積を小さくするのが困難ですが、この形状の安定性は包装する物の形を維持できるというメリットをもたらします。
さらに、炭酸飲料のように気泡が生じて内圧が高くなる可能性がある製品には、内圧の耐性が強い、缶や瓶、ペットボトルなどの硬包装材が適しています。
軟包装の素材
軟包装の素材は柔軟性のあるものがよく使用され、主にプラスチックフィルム、アルミニウム箔、紙などさまざまな材料が含まれます。
ビニール袋と呼ばれているものも、厳密には意味が異なりますが、プラスチック(ポリエチレン)を素材とした軟包材を示している場合が多いです。
下記では軟包装の中でも活躍の幅が広いプラスチックと、プラスチックフィルムと合わせて使用されることもあるアルミニウム箔を紹介します。
プラスチック
JIS(日本産業規格)によれば、プラスチックの定義は「必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で流れによって形を与え得る材料」とされています。しかし、この定義は専門性が高く、一般の方にはイメージしにくいでしょう。
さまざまな情報を調べてみると、プラスチックは合成樹脂と呼ばれることもあり、「主に合成樹脂を人工的に熱や圧力で加工したもの」というような説明がされています。『主に』と付いているのは、近年では石油由来の合成樹脂ではなく植物由来の天然樹脂を主原料としているもの(バイオプラスチックなど)もあるからです。
プラスチック循環利用協会からは、プラスチックの中で生産量・排出量ともに一番多いのは「ポリエチレン」。次点は「ポリプロピレン」だと公表されています。この2種類のプラスチックを製造するには下記の工程を用いります。
参考:プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年
- 原油(地下から掘り出されたままの石油)を加熱・蒸留して発生させた蒸気を発生させる
- 1で発生させた蒸気を冷やして「ナフサ」という油を精製する
- ナフサを加熱して炭化水素ガス(エチレン、プロピレン、その他)を発生させる
- 触媒と炭化水素ガスを混ぜて高温・高圧で化学反応させる
ポリエチレン(PE)
半透明な乳白色をしており、上記の製造方法4で触媒とエチレンが重合することで製造されます。
プラスチックのなかでも「汎用樹脂」と呼ばれる材料の一種です。
原料が安く大量生産に向いており、多くの薬品から影響を受けず、絶縁性、防水性も高いため、レジ袋をはじめ、あらゆる食品、日用品はもちろん、それ以外の容器包材としても幅広く選ばれています。
ただし、紫外線や高温(大体70℃以上)の熱に弱く、接着性がないなどの弱点も有しています。
ポリプロピレン(PP)
無色に近い透明で、上記の製造方法4で触媒とプロピレンが重合することで製造されます。
ポリエチレンと同様にプラスチックのなかでも「汎用樹脂」と呼ばれる材料の一種であり、大量生産に向いています。
ポリエチレンと似た性質を持ちますが、ポリエチレンよりも耐熱温度が高く(大体100℃以上)、硬度や強度、耐薬性も優れているため、電子レンジで使用する食品容器にも使われています。
ただし紫外線の影響はポリエチレンよりも受けやすいと言われています。
アルミニウム箔
アルミニウム箔は、アルミニウムを圧延して薄くの伸ばしたもの。
フィルムや紙と貼り合わせて包材にされることも多いです。
例えばポテトチップスの袋の裏側などを見ると、アルミのように銀色になっているのが分かるでしょう。
アルミニウムはまだ歴史の浅い金属であり、活用されるようになったのは1889年に製錬方法が発明されてからと言われています。
アルミ箔は軽くて丈夫。光沢を持ち、無味無臭です。さらに加工しやすく、バリア性が高い素材として幅広く活用されています。
軟包装のメリット5選
- コスパが良い
- 加工しやすい
- 中味を見せられる
- バリア機能がある
- お客様が使いやすい
コスパが良い
軟包装は、大量生産が可能でコストパフォーマンスに優れている点が特徴です。
軟包装材としてプラスチックや紙が用いられることが多く、軽量なため、輸送コストの削減に大いに寄与します。
軟包装の軽さは、特に業者間で大量に流通させる場合に大きなメリットとなります。
輸送コストの削減は、最終的に商品価格にも反映され、消費者にとっても手頃な価格で購入できることにも繋がるでしょう。
加工しやすい
軟包装は、その軽量さと高い伸縮性から、汎用性が高いです。
素材や加工方法の工夫次第で多様な機能を持たせられ、商品の形状に応じた自在な成形も可能となり、デザインの自由度が大いに広がります。
例えばペットボトルのラベルとして使う場合、その形状に合わせて立体的に加工することが可能です。
印刷も非常に簡単で、視覚的に魅力的なデザインを施せば商品の魅力を一層引き立てます。
デザイン性の優れたパッケージは商品自体の価値を高め、消費者に強い印象を残す効果があります。
中味を見せられる
軟包装は透明素材なので生鮮食品やお菓子の美味しそうな見た目をアピールできます。
中身が見えると製品の新鮮さや品質を視覚的に確認でき、消費者も安心して購入できるでしょう。
透明にする必要がなければ、場合によっては軟包装材に彩色を施し、中身を見えないデザインにするケースもあります。
色彩の華やかなデザイン部分と透明部分をそれぞれ残せば、商品を見せながら魅力的なパッケージもできるでしょう。
バリア機能がある
軟包装は伸縮性がありつつ、丈夫で破れにくいため、さまざまな内容物を安全に包むことができます。
水や空気を通さないので、劣化を引き起こす主な要因である酸素や湿気から食品を守り、製品の鮮度保持や品質維持に効果的です。
真空パックやガス充填パックなどの技術を使えば、より食品の酸化を防ぎ、賞味期限を延ばせます。
お客様が使いやすい
軟包装は軽量なので持ち運びがしやすく、高齢者や子どもでも簡単に開封でき、消費者にとっても非常に使いやすいです。
もしも軟包装材が丈夫すぎて破れない場合でも、切れ目を入れたり、「マジックカット」などの特殊加工を施して意図的に破れやすくする工夫ができます。
さらに、軟包装はすれる際も減容(圧縮)が手でも容易ですので、ゴミ箱の容量を圧迫しません。
軟包装の用途
軟包装は非常に柔軟性があり、不規則な形状の商品でも難なく梱包でき、私たちの日常生活のさまざまな場面で軟包装が使用されています。
まず一番身近なもので言うならレジ袋でしょうか。さらに包材としては野菜や果物、魚、肉、惣菜、レトルト食品、お菓子、調味料、果ては洗剤やシャンプーの詰め替え用パック、薬剤など、挙げていくとキリがありません。
生鮮食品
軟包装は特に肉や魚、野菜や果物などの生鮮食品の包装に多く使われています。
例えば「ラップフィルム」は粘着性があり、特別な道具を使わずに簡単にカットできるため、スーパーや家庭で広く利用されています。
スーパーでは野菜や果物をそのまま包んだり、プラスチックトレーと組み合わせて海産物や肉類を包む際に使用されることが一般的です。
ラップフィルムは中身が見えるため、消費者が商品の状態を確認しやすいという特徴もあります。
軟包装は軽量で丈夫でバリア機能も備わっているため、生鮮食品の鮮度を長期間維持するのに非常に便利です。
加工食品
軟包装は、加工済みおよび調理済みの食品の包装方法としても非常に広く利用されています。
たとえば、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売されているおにぎりやサンドイッチのフィルム包装、お惣菜のパッケージなどです。
プラスチック製の軟包装材は加工がしやすく、多様な形状に対応できるため、商品ごとに最適な包装が可能です。
これにより製品が潰れることなく、元の形状を保持したまま提供されるため、食品の品質保持にも大きく貢献します。
レトルト食品
レトルト食品に使われているレトルトパウチは、その高い保存性により、調理済み食品を長期間にわたって安全に保存できます。
このパウチは電子レンジや熱湯での加熱に対応しているため、そのまま温めるだけで美味しい調理済み食品を手軽に楽しむことができます。
この特性は、忙しい現代人にとって非常に価値の高いものです。
軟包材は、耐熱性が求められる食品、冷凍保存が必要な食品は、素材や加工方法次第でそれぞれに対応できます。
また、食品の品質を長く保ち、非常時においても安心して食料を確保できるようにする上でも重要な包材です。
軟包装の市場規模は成長しています
近年では包装材が環境に与える影響がますます重要視されており、軟包装もこの潮流から外れることはなく、その環境負荷を軽減するための努力が進められています。
まず、リサイクル可能な素材や生分解性素材の使用です。具体的には、従来のプラスチックフィルムに代わる素材として、紙やバイオプラスチックが多く提案されるようになりました。これにより、使用後の廃棄物の量が大幅に減少し、環境保護に貢献しています。
軟包装の技術は比較的新しいものですが、その利用範囲は急速に広がっています。現在では、食品業界だけでなく、飲料やパーソナルケア製品、製薬業界など様々な分野で軟包装の採用が増えました。
規模拡大に伴って軟包装は今後さらに技術が発展し、新しいソリューションを提供してくれる包装となるかもしれません。新技術や新素材の開発状況など、最新の動向をチェックしてみましょう。
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